コロナの影響で3年ぶりとなった日本GP。私はほぼ毎年レースオフィシャルとして関わってきました。レースファンとしてはお金を払ってでもやりたい仕事と言えるかもしれません。体はちょっときついですが💦
今年の日本GPは金曜日が曇り、予選のある土曜日は雨、そして決勝の日曜は晴れということになりました。雨で速かった順のスタートで、ドライレースになることと、ドライのセットアップの時間が短かったという条件により、波乱の展開が予想されます。
Moto3
ホームGPでバースデーポールを獲得の鈴木選手。日曜朝のウォームアップでトップタイムだった佐々木選手。優勝やダブル表彰台が期待されました。
序盤は二人ともトップグループにつけ、Moto3のいつもの激しいバトルが展開されました。しかし残念ながら鈴木選手が単独転倒で戦線離脱。
佐々木選手は4台のトップグループをリードしつつ、終盤戦に向かっていきます。しかし最後はランキングトップのゲバラがわずかに抜け出し、佐々木選手は3番手に。追い抜きを仕掛けるところまで詰めることが出来ず、そのままゴールになりました。
優勝ゲバラ、2位フォッジャ、3位佐々木。
ホームである日本GPで表彰台というのは良かったとは思いますが、佐々木選手としては勝ちたかったろうし、ランキングで上につけている選手に負けて引き離されてしまったので、悔しかったかもしれませんね。
Moto2
雨の予選が振るわなかった小椋選手は13番手からのスタートでちょっと苦しい戦いが予想されました。
しかし、チャンピオンシップのライバルであるフェルナンデスも予選11と芳しくなく、タイトル争いに関していえば戦える位置かと思います。
今回は位置取りもさることながらスタートの加速が素晴らしかった小椋選手、4列目アウト側からまっすぐ加速すると、2コーナー立ち上がりではすでに7位、そして2周目の1コーナーでは5位と、見事なスタートダッシュを決めます。
その後はアルボリーノやロペスなどとのバトルになりますが、先行していたカネットの転倒やチャントラのミスなどもあり、2位へ。中盤にロペスをかわしてついにトップに立ちます。
しかしすぐ後ろではライバルのフェルナンデスが3位まで追い上げてきています。フェルナンデスとロペスとのバトルの間に小椋は1.8秒の差を開くことが出来ましたが、2位に上がったフェルナンデスがファステストラップを更新するペースで追い上げを開始します。
1.5秒差に詰められますが、そこで小椋も同等のペースに上げて対抗し、拮抗したままの息詰まるラスト4LAPでした。
結局フェルナンデスの追い上げもそこまでで、それ以上追い込まれることなく、小椋選手が見事ホームGPでの優勝となりました!!
私もコースサイドからスタンドのお客さんと一緒に一喜一憂しながら見届けました!!
監督である青山博一監督以来のホームGP優勝ということだそうです。地の利はあるけれどプレッシャーも大きいのがホームレースですが、見事にやり遂げてくれました。
これまでの2勝はポールトゥウィンでしたが、今回は追い上げでの勝利。実に頼もしく、将来が楽しみなライダーです。
そしてこれでトップのフェルナンデスとは2点差に詰めることが出来ました。今年のタイトル争いもさらに白熱しています!!
MotoGP
マルケス、復帰2戦目&ホンダのホームGPでのポール獲得。さすがとしか言いようがないですね。ただ、決勝はドライとなり、ハードブレーキが多いもてぎのコースでは肉体的に厳しくなることが予想されました。
私の予想は、Moto2時代に見事な幻の優勝(トップチェッカーも技術違反で失格)を果たしたクアルタラロが勝つのではないかと予想していました。
注目ポイントとしては、初MotoGP出場の長島選手。まだまだこれからの選手と思っていたのに、Moto2のシートを失って半ば引退状態でテストライダーをしていますが、初出場とは言え、テストで走っているマシンとコースであれば、レギュラーライダーを食える可能性もあるのではないか…光るところを見せて復帰の足掛かりにしてほしいと思っていました。
レースは前半、ドゥカティのミラー、マルティン、そしてKTMのオリベイラ、ビンダーという隊列で、マルケスは5位につけて進行。
マシン的には他のメーカーに見劣りしなくなったはずなのに、最近活躍具合が微妙だったKTM勢ですが、珍しく序盤から2台そろって上位です。そしてタイトル争いをしているクアルタラロとバグナイアは10番手前後でもがいており、エスパルガロに至ってはマシントラブルでピットスタートになってしまうというカオス状態。
同じチームのミラーがトップを快走しているのにバグナイアがこんなに苦労するというのは最近は無かったことです。いつも速いクアルタラロも普通に中団に埋もれてしまっています。フライアウェイと言われるヨーロッパ戦以外のレースで起こりがちで、シーズン終盤の波乱要素ですね。
レース中盤以降は、ミラーがグングン2位以下を引き離して独走状態。転倒するイメージがあるミラーですが、この日は全く危なげない走りで、そのまま大差での優勝です。この選手を放出できるんですから、ドゥカティは人材に恵まれていますね。
中盤に単独2位だったマルティンは、後半にKTMのビンダーに追いつかれ、最後は3位へ。これはリアタイヤにミディアムを選択した影響なのかもしれません。
その後方では逆にKTMのオリベイラをマルケスがオーバーテイク。復帰2戦目を4位で飾りました。肉体的にキツイという話だったのに、後半に追い上げることが出来るとは、結構回復具合も良いのではないでしょうか。今シーズン中に復活優勝あるかも?と思ってしまいます。あれだけ苦しんでいたホンダのマシンですが、マルケスが乗るとポールは取るし上位を走るし、やはり別格ですね。
憎たらしいほど強いマルケスが戻ってくるのは嬉しいようなつまらなくなるような微妙な気分ではありますが、クアルタラロもバグナイアも、強いマルケスに勝って力を証明してほしいし、その戦いを見たいです。
クアルタラロは8位。そして後半にペースを上げてクアルタラロを追い込んでいたバグナイアは、最終ラップに仕掛けて転倒、痛恨のリタイヤとなりました。前回のクアルタラロのリタイヤで詰めたポイント差が、再び少し開きましたね。
バグナイアは1ポイント差を詰めるためにアタックして、8ポイント離される結果になりました。このチャレンジには賛否が上がっていますが、どちらかというと否定的な意見が多いかと思います。「優勝か2位かという争いならば、5ポイントの差を詰めるためにアタックする価値はあるけれど、この終盤戦に1ポイントのためにリタイヤするのは馬鹿げている。ここは大きく離されずに確実にゴールすることで、この後のレースでプレッシャーを掛けられる。」というのが、タイトル争い的には正解なのかなと思います。
ただ、前回も似たようなことを書きましたが、リスクを恐れてタイトルは取れないと思います。計算ではなくマインドの問題です。個人的には、バグナイアは速さはあるけれど、チャンピオンの器としてはまだもう一息かなと思っています。来年のバスティアニーニとのチーム内対決は、ずぶとそうなバスティアニーニに分があるような気もしています。
計算高く走れば今年はもしかしたらチャンピオンになれるかもしれませんが、逆にトライするマインドを持ちながらこういうミスから学んで成長することで、今後チーム内の戦いを乗り越えて、複数回タイトルを取る器になる……かも?とも思います。
バグナイアは結果も残していますが、少なからずミスで勝てるチャンスを逃している印象もあります。しかしそこからまた成長もしています。速くてもろいライダーになるか、堅実で安定したライダーになるか、攻撃的かつ強いライダーになるか…期待しています。
最後に日本勢ですが、長島選手、光るところが見えたかはわかりませんが、後方集団とは言え、途中までくらいついて行っていたのはすごい事だと思いました。プレッシャーを感じていたという記事も見ましたが、最後は転倒リタイヤとなって残念でした。しかしそれだけ攻めて走り切ったということでナイスファイトと言いたいです。
そして中上選手は、金曜日に思いのほか走れていたので少し期待したい部分はあったのですが、金曜日の走行後、顔をしかめながらグローブを外した右手はブルブルと震えていました。あの状態で走れるのはもはや奇跡に近く、完走も厳しいのではと思っていました。
それでも中盤までは最後尾ながら大きく離されることなくくらいついて行き、後半は単独になったものの、チェッカーまで走り切ったことは、外からは見えないけれどものすごい仕事だったと思います。3年ぶりの日本GPの舞台で、日本から応援してくれていたファンに走る姿を見てもらいたいという一心だったのだと思います。
ゴール後、もしかしたらすぐに止まってしまうのではと思ったのですが、クールダウンラップも走り切ってくれました。しかしながら、最後は右手を抱えるようにしてタンクに伏せ、左手でアクセルを操作しながらの走行。さすがに声援にこたえる余力はなかったようでした。日本GP直前という本当に悪いタイミングでの事故になってしまいました。無理したことで怪我が悪化していないといいのですが。